ごあいさつ

デザインアワード、発足に寄せて
「タイルを、格好良く魅せる」――。
ただその一点だけを胸に、セラミックタイルの世界へ飛び込んでから、まもなく 35 年になります。その一心で立ち上げたブランドが、Hi-Ceramics、BISCUIT、Sunclay、そしてAQUAPIA でした。素材に惚れ込んだ一人として、一枚のタイルの美しさはもちろん、集合したときに初めて立ち上がる表情まで――どうすればもっと格好良く魅せられるか、工夫を重ねてきました。
そんな日々のなかで、ひとつ、気づいたことがあります。
タイルという素材は、時に空間の主役となり、時に脇役として、けれど確かな存在感をもって置かれます。そして、その”置き方”の素晴らしい発想は、素材屋である私たちだけのものではない、ということです。タイルを愛してくださるお施主様。その想いを受けとめ、空間を描く設計士、デザイナー、インテリアコーディネーターの皆さん。私たち作り手には想像もつかなかった貼り方、配置の妙によって、タイルはまったく新しい表情を見せ、そこに暮らす人の心に潤いを与えていました。土から生まれたタイルの温もりと相まって立ち上がる――そんな豊かな空間に出会うたび、「これを、まだ見ぬ誰かに、ぜひ見せたい」と思うようになったのです。
それが、このアワードを始めようと思った、いちばんの動機です。
だからこそこの賞を、作り手・売り手である私たち平田タイルだけで営むものにはしたくありませんでした。タイルを一つの建築素材として見つめてくださる三名の建築家――芦沢啓治氏、工藤桃子氏、竹口健太郎氏――をお迎えし、私自身も一人の審査員として、ともに作品を拝見します。作り手には想像もできなかった貼り方や、建築のなかでタイルが放つ存在感を、お三方の眼差しを通して、あらためて確かめたい。そう願っています。
ここで、タイルの遠い記憶を辿らせてください。
タイルの最古の姿は、約 4,700 年前、エジプト・サッカラのジェセル王の階段ピラミッドを飾った青緑のタイルとされ、世界の名だたる美術館が現存最古級と位置づけています。
いま、タイルは「surface」「covering」――表面を覆うものとして語られます。けれど太古のエジプトで、人々はそれを tjehnet(チェヘネト)、「まばゆいもの、輝くもの」と呼んでいました。人類は、最初のタイルを「覆うもの」ではなく、「輝くもの」と名づけていたのです。
私はこの「まばゆさ」を、視覚の華やかさだけでは捉えていません。使う人の心までも豊かに照らす、情緒におけるまばゆさ。土から生まれ、暮らしに潤いをもたらすタイルとは、本来そういう素材なのだと思うのです。
現代において、この「まばゆきもの」としてのタイルが、どう使われ、どんな輝きを空間に生み出しているのか。その提案の数々を、一人でも多くの方にご覧いただく場をつくりたい。古代の tjehnet を現代に読み継ぐしるしとして、私たちはこの賞をこう名づけました。
タイルに、新しい輝きを見立てる、すべての方へ。

株式会社 平田タイル
取締役 副社長執行役員平田 幹人