デザイナーがタイルを選ぶ理由とは? YLANG YLANG編
How designers select tiles

空間にタイルを採り入れる際、設計者はどのように空間とデザインの意図を繋ぎ仕上げていくのでしょうか。
今回は名古屋の建築事務所 YLANG YLANG (イラン イラン)さんに、タイルに対する考えやもたらす効果など空間に採り入れるヒントをお伺いしました。

永く愛されるものを、デザインしたい

  :2010年にYLANGYLANGという建築事務所を立ち上げて、はじめは店舗設計を中心に手掛けていました。しかし、商業の短いサイクルのなか、デザインが”消費”されていくような違和感を覚え、やっぱり”永く愛されるもの”をデザインしたいという想いが募っていきました。まずは自分たち自身が暮らす空間をリノベーションし、”普遍的なデザイン”が空間に与えてくれる価値を肌で感じ、提案を通してその価値を伝えていこうと心に決めました。そこから店舗も住宅も分け隔てなく、普遍的なもの、永く愛されるものを目指しながらデザインに取り組んできました。

 

“シンプル”かつ”有機的”という手法と”美渋”という美意識

藤川  :住空間のデザインに携わるようになって10年近く経ちますが、「普遍性はどうやってつくられるのか」ということを、今も日々考えています。それを方法論として言葉にすると”シンプル”かつ”有機的”という手法につながり、さらに、茶道や数寄屋造りの建築などを参照しながら自分たちの美意識を掘り下げていくと”美渋”という言葉が生まれてきました。日本人は、自然を美しいものとして感じる根源的な感覚に加え”渋み”を感じ取る鋭敏な感覚をそなえています。そのメンタリティを空気感として体現できたら普遍性につながるのではないかと考え、辿り着いた選択肢のひとつが、自然の”土”からつくられるタイルでした。

 

全体のバランスを見ながら、空気感をどちらにも振れる

  :自然から生まれた素材でありながらも、タイルは”硬さ”をそなえているのであたたかみのある表情のタイルを用いても、その硬さが空間を引き締めてくれます。雰囲気が柔らかくなり過ぎることがなく心地よく五感に訴えかけてくれます。

藤川  :例えば、空間がシンプル過ぎると感じたら、タイルの持つ土の素材感を採り入れる。反対に、空間に木を使い過ぎていると感じたらシャープさをそなえた異素材としてタイルで引き締める。”シンプル”と”有機的”は一見相反する要素ですが、タイルは全体のバランスを見ながら、どちらにも空気感を”振る”ことができる素材だと思います。

その場所、その人に合う空間を、一点物としてつくる

  :あくまで素材ありきではなく、空間全体の空気をつくることを大事にしながら設計をしていくなかで、質感や手ざわり、色やかたちが浮かんできます。そのイメージに合うものをカタログや、現物を見ながら探していくのですが、タイルという素材には本当にさまざまな表情があって、素材からまたインスピレーションをもらうこともあり、デザインの幅を広げてくれていると感じます。

藤川  :その場所、その人に合う空間をひとつずつ”一点物”としてつくっていきたいと考える自分たちにとって、豊富なバリエーションをそなえたタイルは、そこにしかない空気感をつくり出すための、必然的な選択肢のひとつになっています。どうしてもその空間に合うものがないという時に、工場に足を運んでオリジナルのタイルを一緒につくらせてもらったこともあります(※)。

 


▲(※)柔らかなピンクテラコッタが印象的なタイル、Unravel(アンラベル)

機能以上のものを、いくつも得られる

  :私たちは、タイルから機能以上の素材感や満足感を得られることを何度も経験してきました。水回りだけでなく、タイルがもっと当たり前の選択肢として住空間に生かされてもいいと思います。

藤川  :タイルは、近くに居ると本能的に触りたくなるような、感覚に訴えかけてくるものだと思います。こうした人の感覚や内面のメンタリティを大切にしながら、私たちはこれからも普遍的なデザインを提案していきたいと考えています。

 

イランイラン一級建築士事務所  |  YLANGYLANG

金瑛実(Yeongshil Kim)
藤川祐二郎(Yujiro Fujikawa)

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