クラフトタイルができるまで
How to make ”Suui”

私たちがタイルを開発する際、様々な手法が存在します。まずはどの地域で作るか、そしてどの土と釉薬を使うか、形やデザイン・・それぞれの工程で要素が吟味され土台ができていきます。

またタイルは焼成して仕上がるプロダクト、焼きものです。焼いた後に見る表情は厳密にいうと1枚として同じタイルはなく、むしろそれぞれ異なる仕上がりや表情が魅力のひとつです。

タイルもお皿も同じ土から作られる焼きものですが同じ原料でも使われるシーンは全く違います。タイルは壁に貼ることで機能しますが、かたや日常の中でよく手に触れる食器は1枚がプロダクトとして完成されていて、手への馴染みや意匠を考え、より丁寧な仕事を要求されます。

以前の瀬戸の食器工房から生まれるクラフトタイルでは一般的に機械化されたタイル工場で作られるタイルとは製造工程が大きく異なる食器工房で生まれたクラフトタイルSuuiをご紹介しました。では実際にどの様な工程を経て制作されているのか、今回はその工房の中を覗いてみます。



▲水分を含んだ柔らかい生地は濃い灰色で重みがあります。

1. 粘土を型に流し込む

 まず液状にした粘土を石膏の型に勢いよく流し込みます。

石膏はよく水を吸うので、型の隅々まで行きわたった液状の粘土は水を吸われ形を保てるようになります。

石膏によく水を吸わせたあと、型を開けてSuuiを取り出していきます。

まだ柔らかい粘土なので欠けている部分があればヘラを使って補修していきます。

 


▲長い板にのせて天日干しします

2. 粘土を乾燥させる

 型から取り出されたSuuiを長細い木の板に乗せ、太陽の下で天日干しします。

タイル工場には大きな窯があり常に火が焚かれているので工場内部が温かく、窯の近くで乾燥させることが多いのですが、食器工房は工房が小さく、窯も常に焚かれていないので日に当てて乾かすことが習慣になっているのです。

 

 

▲乾いて水分が抜けると色が変わります


▲彫刻刀でバリを取り除いているところ

3. 形を整える

 乾燥を終えたタイルは「バリ」と呼ばれる型と型の間の隙間に入ってしまった余分な粘土を彫刻刀で削る工程に入ります。

バリがついていると焼成後、硬く鋭利になり手を切ってしまう恐れがあるので、食器工房では丁寧に取り除いていきます。

一枚一枚に必ずバリはついてしまうので根気のいる作業です。

 


▲一枚ずつタイルを釉薬に浸していく

4. 釉薬をかける

 形を整えた後、釉薬をかけていきます。

釉薬はしっかりと水で溶いた液状のもので、タイルを浸すと乾燥したタイルが水分を吸ってほんの数秒で吸着します。

 


▲スポンジが回転して裏面についた釉薬を拭き取る

5. タイル裏面の拭き取り

 釉薬はガラスの成分を含んでいて、窯の中で高温で焼成される際に一度溶けたガラスのような状態になります。

タイルの裏側に釉薬がついているとガラスが窯にひっついてとれなくなってしまいます。

なので釉薬をかけた後は、タイル裏側の窯との接地面についた釉薬をスポンジで拭き取っていきます。

 

 


6. 窯入れ

 いよいよ窯に入れる準備です。

板の上にタイルを規則正しく並べ、隙間に支柱を立てその上に板を、とまるでタワーマンションのよう。

窯の中で倒れないようにバランスよく板を組んでいきます。

▲バランスに気をつけながらタイルを板に並べ積んでいきます。


▲台車をゆっくりと窯の中に押して入れていきます

7. 焼成

 積まれたタイルは1メートルほどの高さに。

ゆっくりと窯の中に入れて扉をしめます。

ここから1日かけて1300度の高温へ到達、取り出せるのは冷却期間を経た2日後になります。

 

 

白磁の透き通るような生地に青磁色の貫入の入った陰影のある釉薬、鋳込みでしかできない立体的な形、おもしろいパターンなど、他の建材にはないタイルでしかできない意匠を追い求めた結果、Suuiができあがりました。

お皿と同じ食器工房、制作過程を経て生まれるSuuiは1ピースがまるでひとつのプロダクトのような存在感のあるシリーズです。

釉薬の艶と繊細な貫入の美しさ、微細な色彩感覚は均一的な製造ラインで製造されるタイルとはまた違った魅力を持ち合わせています。

ぜひお手に取って、その奥深い表情をご覧になってみてください。

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