瀬戸の食器工房から生まれるクラフトタイル
Ceramic Tile “Suui”

世界の中でも固有の文化を持つ日本の焼きもの文化。中でも瀬戸は代表的な窯業地の一つであり、古くから高級施釉陶器の生産地として知られ、この地域ならではの文化が深く根付いている場所です。焼きものの代名詞としてよく耳にする“せともの”という言葉もここから生まれました。人々の日用品であるお茶碗などの食器類、また熱に強いセラミックの特性は工業製品として精密機器の部品など様々に多用されています。

 

瀬戸の街を歩いていると、あらゆる場所に窯業地の特徴を垣間見ることができます。家の生垣や住宅の基礎となる土台の部分に、焼きものに使用される粘土を掘り出す際に出る「サバ土」が用いられていたり、橋の欄干にタイルが張られていたり。

瀬戸の人々の暮らしに自然と焼きもの文化が根付き、共に育まれてきたことが実際に体感できる風景が広がっています。

瀬戸は小高い山に囲まれ気候も温暖で過ごしやすい

タイルの開発を進めようとしていた頃、瀬戸にある1つの食器工房にたどり着きました。小さな規模の食器工房ではまるで新雪の様に純度の高い白色の土が使われていました。白磁は透明度の高いガラス釉薬との相性が抜群で、淡い繊細な色でも明瞭に表現することができます。それがこの工房の最大の魅力だったのです。しかしこの土にはいくつか課題がありました。まず、一般的にカオリンが多く含まれる白磁の生地は粘土分が少なく、乾燥しやすい。焼きもので乾燥しやすいということは生地にヒビが入ったり割れやすくなります。ほとんどの工場でこの土が避けられる理由は扱いの難しさにありました。

 

 手間のかかる製造工程はほとんどが手作業

あるとき、工場を訪ねた際にふと青磁色とフォルムが美しい急須が目につきました。歪みのない丸いフォルム、艶やかで淡い青磁色は素地の白さを一段と引き立て、周囲の光を集めているような存在感がありました。一般的に食器を作る際は、鋳込み成形と言って石膏の型に粘土を流し込んで焼く製法がとられています。この鋳込み成形は、立体的な形を作ることに長けているため、新しいタイルは他にはない立体的かつ有機的な形を目指すことにしました。

この淡い青磁色と有機的なフォルムを新しいタイル開発の中での重要な要素に位置付けました。

 

中国陶磁を思わせる青磁色の急須

 

▲釉薬のサンプルピース

急須の青磁釉薬は透明釉薬が使われていましたが、今回はあえて奥行き感のある貫入の入った釉薬で開発しました。

貫入は焼成の際に生地と釉薬の収縮率が違うことで発生するガラスのヒビのような意匠のことで幾重にも入った貫入に光が当たると幻想的な輝きを放ちます。

白磁と貫入の奥行きが重なり光の当たり具合によっては緑や水色に見えたりと様々な表情を見せる味わい深さもポイントです。

 

 ちょうど開発を始めたのが5月という季節柄、梅雨時期の憂鬱に感じる雨の中でも、鮮やかに咲く淡い紫陽花のモチーフをデザインに落とし込みました。

紫陽花の特徴である花房や株が重なっている様子、そして釉薬の貫入は紫陽花の花表面の葉脈模様が細かく再現されています。英語で紫陽花はHydrangea「水の器」という由来があり、水のような透明感を連想しました。このタイルならではの曲線が字面ともリンクすることから製品名は「Suui」と命名しました。

 

食器と全く同じ製法で作られたSuui、お気に入りの食器を選ぶ感覚と同じように空間に取り入れてほしい。そしてこのタイルが張られた壁を見るだけで、心があたたまるような感覚になってもらえたらいいなという想いが詰まっています。

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