前回の世界のタイル工房を訪ねて(2) に引き続き、歴史ある街フランスのミヨーの続編、 いよいよタイル工房を訪れます。このミヨーに創業し約190年もの歴史をもつ 工房で生まれたのが「Raujolles」というタイル。ニュアンスを含んだ絶妙な色合い、ひとつひとつ釉薬を手がけすることで生まれる奥行きのあるムラはまるでアートピースのような佇まいを纏う美しいタイルです。
Raujollesを作る工房では現在、5代目のオーナーをはじめ7人の職人がここで受け継がれてきた昔ながらの製法にこだわり、日々タイルづくりに向き合っています。彼らが目指すものづくりは、そうした普遍的な価値を持つ空間同様、時が経っても決して色褪せることのない美しさ。工房の近郊で採れる良質な土を用いタイルの原料作りから成型、乾燥、施釉、焼成に至るまで、現在多くのタイルメーカーが分業化を進めるなか全ての工程を工房内で行なっています。
タイルの品質や仕上がりはその日の気候や天候によって大きく左右されるもの。人の目が行き届いた丁寧なものづくりを徹底しています。
また、テラコッタの無釉タイル制作を長く続けてきたタイルづくりのノウハウを活かし、国内外の美術館や教会といった歴史的建造物の修復にも数多く携わっています。
「Raujolles」で特に目を引くのは、フランスならではの洗練された色使いです。カーキ、オレンジ、レッド、淡い水色などどれもシンプルな原色に少し遊び心を加えたニュートラルなフランスらしいカラーが揃います。
この発色を際立たせるためには、素焼きタイルにいったん白い釉薬を施した後、手作業で色釉薬をかけ再び焼成するという、非常に手間のかかる製法を採用しています。その結果、自然で味わいのあるムラが生まれ、深みのある表情を作り出すことができます。
彼らが作るタイルは、ルーブル美術館をはじめとする歴史的建造物、国内外のヴィラや邸宅など、数多くの優れた建築に採用されています。
190年以上にわたり、蓄積してきたタイルづくりの技術と知識、そして感性こそが、彼らの遺産であり文化といえるでしょう。
土や釉薬といった原材料、手間を惜しまない伝統製法、そしてそれを家族で受け継いでいくこと。そうした彼らの徹底したこだわりとタイルづくりへの情熱が、魅力あるプロダクトを作り出しているのです。