社会全体がSDGsへの取り組みが加速する中、タイル業界においても企業体制から製造工程など様々なアプローチで対策が進んでいます。
SDGsの17の目標、中でも
目標07「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
目標13「気候変動に具体的な対策を」
の2つは、脱炭素・カーボンニュートラルにつながる目標であり、国の政策はもとより、企業活動においても喫緊の課題となってきています。
Journalではこれまで「タイルから考えるサステナビリティ~Think sustainability for the future of tiles.」として2つの記事(#1、#2)を紹介してきましたが、改めて社会背景の流れをおさらいし様々な企業活動や取り組みの根源をみていきましょう。
脱炭素を巡る動き
1997年京都議定(*1)、2015年採択のパリ協定(*2)などで、世界の脱炭素に対する目標が更新されてきました。2021年に英グラスゴーで開かれたCOP26では、パリ協定の「気温上昇1.5℃以内」の努力目標達成に向けて、実施指針が完成しました。
このCOP26を受けて、世界全体のCO2排出量の9割近くに達するG20のすべての国を含む150か国以上が、「カーボンニュートラル」の目標をかかげています。
日本はCOP26に先駆けて「2030年に温室効果ガスの削減目標を2013年に比べて46%削減、2050年にカーボンニュートラル」と目標をかかげ、産業界、とりわけ製造業での取り組みが加速、企業経営においてもサステナビリティを評価するESGの概念が普及し、「気温上昇1.5℃以内」を達成しようという大きなうねりが生まれています。
カーボンニュートラルとは
「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します」
参照:環境省 脱炭素ポータルより抜粋
建設業界は資源を採掘し建物をつくる活動の中で大量にCO2が排出されます。ドイツのある調査(*3)によるとごみの半分は建設から、また全世界の CO2 排出量に占める建設部門の割合は約37%(*4)と言われています。さらに2060年までに世界の建物の総量は今の倍に増えるとも予測されていることから、建設業界のSDGsへの取組みはより一層求められると言えるでしょう。
ライフサイクルアセスメント
カーボンニュートラルの目標へ到達するための1つの具体的アプローチとして、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assesment、以下LCA)と呼ばれる手法があります。
LCAは製品・サービスの原材料の調達から製造、流通から廃棄、リサイクルに至るライフサイクル全体又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法です。
LCAの結果を公開するタイプⅢのエコラベルの具体的な実施方法はISO-14025(2006)として国際標準規格になっており、欧州ではEPD(Environmental Product Declaration、環境製品宣言)という呼称で実施され、日本でも「エコリーフ環境ラベルプログラム(*5)」として、インターネットを通じて情報公開がされています。
このように製品の環境負荷を定量化し、カーボンニュートラルを目指す流れの中で、地球温暖化対策のための温室効果ガス排出抑制手段としては「カーボンオフセット」が広く知られています。
カーボンオフセット
カーボンオフセットとは、人間の経済活動や生活などを通して排出された二酸化炭素などの温室効果ガスについて、削減しようと努力をしてもどうしても削減できない分の全部または一部を、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)などで、埋め合わせ/オフセットし、実質的にゼロにすることを指します。
環境省では、日本におけるカーボンオフセットを次のように定義しています。
【カーボン・オフセットとは】カーボン・オフセットとは、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、 自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が 困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(以下 「クレジット」という。)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること、すなわち『知って、減らして、オフセット』の取組をいう。
参照:我が国におけるカーボン・オフセット のあり方について(指針) 第2版
平田タイルでは、SDGsへの取り組みを企業活動を行う中で重要視していることから、カーボンオフセットの考え方を取り入れ、C02削減具体策を実行します。一部の製品についてLCAを活用、ライフサイクル全体のCO2排出量をカーボンオフセットにより実質ゼロを実現した「カーボンオフセットタイル(仮称)」として提案することにいたしました。
Hi-Ceramicsブランドの代表的なアイテムである「エクストリーム」シリーズのすべてを対象にしています。
セラミックタイルはその製造過程の特に焼成段階において温室効果ガスを排出(*6)しますが、「エクストリーム」シリーズの製造メーカーであるROYAL MOSA社は、永年持続可能な地球環境の実現への意識が高く、過去10年でCO2排出量を大きく削減させました。完全循環型なものづくりの認証であるCradle to Cradle(*7)をタイル業界で唯一認証取得取得するとともに、エクストリームを製造する際に排出されるCO2量を正確に把握しています。これら一連の活動は、先に述べたカーボンオフセットの基本である「温室効果ガスについて、削減しようと努力をしてもどうしても削減できない分の全部または一部をオフセット/埋め合わせること」とも合致するため、カーボンオフセットによりCO2排出を実質ゼロといたしました。
このカーボン・オフセットのプロセスにおいては、タイルの製造、流通、廃棄の際に排出される温室効果ガス(CO2)を国内、海外それぞれの排出量に応じて、森林由来のクレジットを活用しています。
平田タイルではこの活動を基点とし、今後もこの様な地球温暖化の抑制や森林資源を守る取り組みを積極的に進め環境活動に貢献していきます。
LCA(Life Cycle Assement、ライフサイクルアセスメント)の算出は第三者の監修を受け、カーボンオフセットマークを取得しています。カーボンオフセットクレジットの無効化についてはJ-クレジットプロバイダーを通して行っております。
※ROYAL MOSA社については過去のJounalで更に詳しく紹介しています。そちらも合わせてご覧ください
(*1)京都議定書(1997年12月):COP3で採択。気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書。先進国等が約束期間において数量化された約束に従って温室効果ガスの排出を抑制しまたは削減すること等を定めた。
(*2)パリ協定(2016年11月):COP21で採択。気候変動の脅威に対する世界全体での対応の強化。気候変動問題の解決が世界共通の長期目標に。「世界全体の温室効果ガス排出量削減のための方針と長期目標の設定:世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html
(*3)出典:https://www.destatis.de/DE/Themen/Querschnitt/Jahrbuch/jb-umwelt.pdf?__blob=publicationFile
(*4) 出典:Global Alliance for Buildings and Construction, “2021 GLOBAL STATUS REPORT FOR BUILDINGS AND CONSTRUCTION”
(*5)2022年に「SuMPO環境ラベルプログラム」と名称変更し、一般社団法人サステナブル経営推進機構により運営されています。
(*6)セラミックタイルの製造においては、タイル1kgあたり0.82kgのCO2が排出されるとされています。一般的な厚み10mmの床タイルの場合、1平米のタイルの重さは約22~23kgのため、1平米のタイルの製造で排出されるCO2は約18.5kg-CO2となります。
(*7)「生産→消費→廃棄」と言う従来のサイクルに対し、「生産→消費→生産」という持続可能なサイクル、資源を有効的に活用する完全循環型のものづくりを目指す環境認証システム。C2Cとも呼ばれる。