タイルから考える サステナビリティ #2
Think sustainability for the future of tiles.

社会全体がSDGsへの取り組みが加速する中、タイル業界においても企業体制から製造工程など様々なアプローチで対策が進められています。

前回(タイルから考えるサスティナビリティ #1)は、持続可能な社会への取り組みを製品に活かした事例や、タイル製品を中心にご紹介してきました。今回は、SDGsと連動して環境問題が取りだたされる以前か ら環境負荷を考慮し、企業全体として取り組んできたオランダのRoyalMosa社に焦点を充て、環境を考慮した企業体制そのものにも目を向けていきます。

ゆりかごから、再びゆりかごへ。 

Royal Mosa社はタイルメーカーとして珍しい”Cradle to Cradle”という国際環境認証を早くから取得しています。“ゆりかごから墓場まで” Cradle to Graveというのはイギリスの社会福祉政策スローガンとして有名ですが、そのスローガンをなぞり、ゆりかごからゆりかごまで “Cradle to Cradle”と名付けられたこの認証は、資源を使い物を作って捨てるのではなく、自然界の循環と同じ様に全ての材料が資源に戻り循環し続けるという仕組みづくりを掲げたもの。1990年代にドイツの科学者マイケル・ブラウンガードとアメリカの建築家ウィリアム・マクダナーによって提唱されました。 

この認証制度の大きな特徴は、廃棄物を減らすという考えではなくもう一歩踏み込み、製品のデザインを考える段階から「廃棄物の出ない仕組み」を作り出すことです。 

このCradle to Cradleの認証を受けるには大きく5つの基準を満たす必要があります。ここからは実際にRoyal Mosa社が行なっている事例と合わせて見ていきます。 

 

5つの条件 

1 原材料の健康性 – 原料が人や環境に有害でないこと。 

タイルは粘土と砂という天然素材が主成分ですが、成分はppmレベル(100万分の1レベル)まで分析管理され、鉛や水銀、カドミウムなどの有害物質を排出していません。また揮発性有機化合物も含まれていません。 

2 原料・部品の再利用 – 原料がリユース可能、実際に再利用されていること。 

タイル製造時に出る廃棄物を再利用し、大規模プロジェクトの際には残材を回収することを実施しています。再生材が使用されている例としてRoyam Mosa社の壁タイル(10Thirty15ThirtyMural )には34%、床タイル(XtremeSolids)には21〜45%の原料がそれにあたります。 

3 再生可能エネルギーの利用とカーボンマネジメント 

タイル製造時に発生するエネルギーは現在、全体の3分の1が自然エネルギーによって賄われています。焼成窯の余熱の再利用や省エネの取り組みを強化し、過去10年間でCO2排出量を48%削減、大気汚染に繋がる超微粒子物質の排出は91%削減しほぼゼロを達成しています。 

4 水の適切な管理 

Royal Mosa社では生産工程で使用する全ての水を再利用、あるいは蒸発させることを目指し実際に工場内でリサイクルされる仕組み(浄化、再利用)を実現しました。10年間で地下資源からの採水を60%削減しています。

5 社会的な公正さ – 生産者、供給者が良好な労働条件であること。 

Local for local を掲げるRoyal Mosa 社では可能な限り、周辺地域の労働力と原料調達で生産が賄われています。工場から半径500km以内のフランス、ドイツ、オランダの採石場から全体の約90%を調達し、採石期間後は採石場の環境回復計画を策定することで持続可能なサイクルを目指しています。製造業では原料コストや人件費が安いアジア地域などで製造されるケースが多い中、地元で作ることにこだわりを持っています 。

 

この様に環境負荷に対する意識を早くから高めてきたRoyal Mosa社はこの厳格な条件が揃うCradle to Cradle認証を受けたことはもちろん、その取り組みに共感した企業がRoyal Mosa社のタイルを採用するなどの動きが実際に広まり始めています。 

SDGsが提唱されたことで私たちの社会的な環境意識は高まっていますが、実際に認証に則った取り組みをするためには多くのプロセスを要します。また、様々なコストが上がることもほぼ不可避でしょう。Royal Mosa社が他と異なるのはそれよりも本質的に持続可能であることや環境問題に早い段階から目をむけ、地産地消、地域雇用の維持に貢献してきた姿勢と実績にあります。 

その企業努力が製品であるタイル1枚1枚にも一貫して表れており、それこそが最大の魅力ではないでしょうか。 

Royal Mosa社のタイルについての記事はこちら (唯一無二の美しさ) 

 

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